おとなのための絵本シリーズ

孤独の果てに愛をつかんで

孤独の果てに愛をつかんで(本文)

遠い昔のヨーロッパ地方に、アンネという名の少女がいました。彼女は、母と弟と3人で、町の小さな家で暮らしていました。父親は幼い頃に亡くなりましたが、母は果物屋さんで働き、家計を支えてくれました。生活は決して豊かではありませんでしたが、家族3人、ささやかな幸せの中にいました。
 
しかし、ある年からアンネの幸せは次々と崩れてしまいます。流行り病で弟を失い、さらに母も肺炎で亡くなってしまいました。アンネはたった一人で町に残されました。まだ10歳の時でした。彼女は母が働いていた果物屋で働き始めました。
 
10年の月日が流れ、アンネは20歳になりました。彼女はまわりの人々の優しさを感じながらも、心の中の孤独を拭いきれずにいました。町に自分の居場所がないように感じていたアンネは、自ら志願して兵士の道を選びます。戦場へ赴き、「強くなる」ことだけを目指して、闘いに明け暮れました。
 
女性兵士は珍しい存在でしたが、アンネは強くなるという目標のため、次々に戦場へと赴きました。軍隊の中で彼女の地位は上がり、まわりからの期待も大きくなります。仲間のために、その期待に応えるために、アンネは無心で勝利を求め続けました。
 
20代後半には部隊を指揮する立場になっていたアンネですが、30歳を過ぎた頃、ついに大きな敗北を喫してしまいます。自信をすっかり失った彼女は軍隊を離れ、生まれ育った町へ戻りました。これからはひとりで、ただ静かに時が過ぎるのを待とうと、アンネは決めたのでした。
 
ところが、運命はアンネに違う道を用意していました。町で出会った男性と、彼女は結婚したのです。ながいひとりの時間を経て、アンネは再び誰かと人生を共にすることになりました。
 
アンネは夫のことを大切に思っていましたが、同時に、自分の過去や弱さをさらけ出すと、嫌われてしまうのではないかという不安も抱えていました。そんなアンネに夫は深い理解を示し、ただそばで見守り続けました。二人の間に子供はいませんでしたが、彼らはとても穏やかな生活を送りました。
 
アンネは70歳で、静かに息を引き取りました。最期の瞬間、彼女の心には深い感謝の念がわき上がりました。人を愛し、人に愛されるという経験は、人生でどんな困難があっても、最後に深い安らぎを与えてくれるのだと、アンネは心からそう思ったのでした。
 
【現在の魂の気づき】
アンネは家族を失った寂しさを、どう昇華していいのか分からなかったのだと思います。自分の弱さや寂しさをさらけ出すことができずに、ひとりで孤独と向き合うしかありませんでした。 戦場に赴き、強くなることで、その孤独を埋めようとしたのだと思います。
アンネは、愛する人と出会い、静かな幸せを手に入れました。 私もいつか、そんな安らぎに包まれたいと願っています。 きっと、自分の中の葛藤と正直に向き合うことが、幸せな未来への道なのでしょう。 だから私は、今の自分を「これも私なんだ」と、優しく認めてあげようと思います。