おとなのための絵本シリーズ

仲間とともに、人々のために

仲間とともに、人々のために(本文)

17世紀のイタリアに、ゼベットという名の男の子が生まれました。父は鍛冶屋のような火を使う仕事をし、母は病弱ながらも家族の面倒を一生懸命みていました。ゼベットはやんちゃないたずらっ子でしたが、家族に囲まれて幸せに暮らしていました。
 
しかし平和な暮らしは長く続きませんでした。ゼベットが5歳のとき、当時流行していた天然痘で、両親が次々に亡くなってしまったのです。完全にひとりぼっちになったゼベットは、悲しくてどうしていいか分かりませんでした。お腹を空かせ、あてもなく道を歩いていると、雨が降ってきました。
 
ある家の前で雨宿りをしていると、おばあさんが家に招き入れてくれました。事情を知ったおばあさんは、一緒に暮らすことを提案してくれたのです。それからは、おばあさんと飼い猫との3人暮らし。血のつながりはなくても、ゼベットとおばあさんは互いを大切に思い、温かな日々を過ごしました。
 
やがてゼベットは17歳になり、大学のようなところで「哲学」を学んでいました。彼の心には、「世の中を変えたい」という強い思いがありました。自然災害で作物ができず、税金は高くなり、人々の暮らしは苦しくなる一方でした。ゼベットは、みんなが幸せになれる世の中を作りたいと願っていたのです。
 
25歳になったゼベットは、その情熱を行動に移します。彼は仲間とともに立ち上がり、「活動家」として政府と闘い始めました。貧しい者の声を聞かない政府に立ち向かうため、彼は暴動の指揮をとったのです。
 
本当は話し合いで解決したかった。けれど政府が耳を貸さないため、力に訴えるしかありませんでした。ですが、そのために仲間たちが次々と命を落としていきました。暴動を指揮しながらも、ゼベットの心には虚しさが広がっていました。
 
「世の中を変えたい」という強い思いと、「本当にこんなことをしていて状況は良くなるのだろうか」という疑念が、胸の中で渦巻いていました。仲間を失い、自らの無力感に苛まれながらも、ゼベットは闘いを止めることができませんでした。
 
そして26歳のとき、ついにゼベット自身も政府の銃弾に倒れてしまいました。無力感と、志を遂げられなかった残念な気持ちを抱えながら、その短い生涯を終えました。
  
【現在の魂の気づき】
幼くして家族を失ったゼベットの孤独は、現在の私の心境と通じるものがあります。家族はいるけれど、私はどこか「ひとりぼっち」のような気持ちを抱えて生きてきました。寂しさや怖さ、愛されたい気持ちなどが、自分の中にもあったことに気づかされました。
ゼベットは志半ばで銃弾に倒れてしまいましたが、彼の生き方から学ぶこともありました。仲間とともに、人々のために頑張るという気持ちや意識。それは、今後の自分の生活にも活かして受け継いでいきたいと思います。