おとなのための絵本シリーズ

自立と堅実な歩み

自立と堅実な歩み(本文)

今から200年ほど前のヨーロッパ。人里離れた山奥の美しい村で、ピーターは生まれました。祖母と両親、そして幼い弟と妹がいる大家族です。
 
ピーターは幼い頃から、家の仕事を一生懸命に手伝いました。家族が喜んでくれるのが嬉しかったのです。もっと甘えたい、もっと遊びたい、そんな気持ちもありました。けれど長男としての役割意識のようなものが、無意識に芽生えていたのです。
 
そんなピーターの気持ちを、祖母や両親は深く理解していました。彼らはピーターを頼もしく、そして愛おしく見つめていました。その温かい眼差しがあったからこそ、ピーターはよりいっそう家族のために頑張ったのです。
 
時が経ち、ピーターは25歳の立派な青年に成長しました。彼は変わらず家族のために尽くしていましたが、その胸には相反する二つの思いがありました。今の穏やかな生活に満足する気持ちがありながらも、自由に自分の力で人生を切り開いてみたい、という思いもあったのです。
 
家を出てしまうと、家族との絆が薄れてしまうのではないかと、ピーターはためらいました。それでも、「このままでは終わりたくない」という強い想いが、その迷いを振り切らせます。ピーターはついに決意を固め、新しい世界へと一歩を踏み出したのです。
 
都会に出たピーターは、着実に人生を切り開き始めました。心配していた家族との絆は変わることはなく、その安心感が都会でのピーターの大きな支えとなりました。堅実な性格ゆえに、大きな冒険こそしませんでしたが、彼は自分の力で一つひとつ確かな実績を積み上げていったのです。
 
ピーターは仕事で知り合った年下の女性と結婚し、男の子を授かりました。二人は互いを深く信頼し合っていました。50歳になる頃には、人々の相談に乗る「コンサルタント」のような仕事で、ピーターは成功を収めていました。堅実に歩んできた道が、彼を支えていたのです。
 
そして60代後半、ピーターは老衰でベッドに横たわっていました。彼は生涯を振り返り、妻への感謝で胸がいっぱいになりました。自分の力で人生を切り開き、愛する人とともに歩んだ人生。ピーターは満ち足りた気持ちの中で、静かに息を引きとりました。
 
【現在の魂の気づき】
ピーターの家族を想う優しさ、そして自由に人生を生きたいという葛藤。そのすべてが、今の私の心と重なります。私も無意識のうちに家族への責任を強く感じ、それが自分の肉体に大きな負荷をかけていたことにも気づかされました。
ピーターは「自分の身の丈に合う」生き方を追求し、幸福感を味わって人生を終えました。その感覚が今、私の中にも流れ込んできています。私も背伸びをせず、自分を信じて人生を切り開き、最後は満ち足りた気持ちを味わえればと思っています。